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2018年11月04日
人ごみに紛れて
帰り道
ポケットに入っている
誰にも気づかれないように
知らないふりで
改札を抜けて
ホームに立ちつくして
どうしようか
みんな
同じ気持ちなのだ
列車を
待っているふりして
カバンの中や
買い物袋や
ケータイの画面に
見つけているのだ
小さい秋を
2018年11月04日
とても疲れているのに
体を休める方法が分からない
それを考えすぎて
もっとくたびれてしまう
とても優しくしたいのに
愛する方法が分からない
それを考えすぎて
なんだか涙が出てしまう
とても寂しいのに
誰かと紛らす方法が分からない
それを考えすぎて
本当に一人ぼっちになってしまう
2018年11月01日
強がっているけれど
わたしの心のなかに
つり橋があるのです
険しい渓谷で
風に揺れています
誰かが歩きはじめると
切れてしまいそうになるのです
その人もろとも
だから決して
渡ってはいけない
でも
今日は
秋の終わりの
燃えるような
黄金の
森と風の色に
染められて
川がささやいて
よい眺めです
2018年11月01日
髪を洗い
乾かして
草がなびいているのが分かる
からりと晴れ渡っている
爽やかな風に目を閉じて
でも
このまま
忘れてしまっていいのか
どこか
濡れているままにしておこう
目を開く
草原は乱れて
伸び放題
2018年11月01日
きみと話しているとテレビで見たことのある深海に潜った映像が浮かんできてどこまでも光の無い白い海の底を水中カメラのライトで照らし出した
イメージが見えてきて語られている言葉がプランクトンの死骸のように思えてきてしかしマリンスノーは無くならないだろうきみとのおしゃべりが
約束している
2018年11月01日
街から街へ
列車は走り
停車して
ある駅では
激しい雨だ
まもなく
ドアが閉まる
隣の席に
秋の雨が乗ってきた
どこまで行くのですか
僕がたずねると
同じく
たずねてきた
どこまで行くのですか
と
列車は走り
街から街へ
そろそろ
涙を止めて
2018年11月01日
思い出せないものを
思い出せないのです
頭の中に
置き忘れてしまって
何が思い出せないのか
思い出せないのです
忘れてしまったものが
置かれていることだけは
思い出しています
力なく
笑うしかありません
これから
無意味な
思い出し笑い
をするしかあるまい
2018年11月01日
ただいま
帰宅してすぐに
僕は向き合う
ハンガーと
するすると
服を脱ごうとして
ここにかけられるもの
宙ぶらりんのまま
いつまでも
体にまとわりつき
早く脱いで
ぶら下げたいのに
からっぽの
ハンガーは
今のところ
この部屋の
一日を吊るすのに
精一杯みたいだ
2018年11月01日
どこまでも
闇
線路
黒い列車
灯りもつけず
真っすぐ
過ぎていく
踏切の音を
耳にして
そうして
すっかりと
よく
眠っている
僕の影を
起こさないように
眼を閉じてみる
もう一人の
暗い
僕がある