冬はつとめて
昔、夜には豆炭あんかがあった。祖母が夕方に炭をおこしてくれた。弁当箱のような容器にそれを入れる。布団の中へと。
冬はつとめて。その炭の火の気配で目が覚めたものだった。
朝の支度をしている祖母や母の二人の話し声の響きを耳にしながら、寝返りを打ったり、潜りこんだり、顔だけ出したり。体の芯まであたたかい。
ところで、なぜだかクリスマスイブには雪が降るものだと、ずっと思いこんでいた。
サンタクロースはその上で、さっそうと滑るそりに乗らなくてはいけないから、と。
ある日は飛び起きた。心配したが、雪が降り始めていた。
ほら、やっぱりと家族に興奮気味に話して、玄関の戸を開けて白く化粧した庭を眺める。パジャマ一枚。
すっかりと冷えてしまった。母から、もう少し布団の中に入っていなさいね、と。
台所から届く火の匂い。茶の間には懸命に飾り付けをしたクリスマスツリー。早朝から灯りをつけてみる。
寒い。床へと戻ろう。夜を徹して赤々としていた炭火は、まだはっきりと息をしている。
足元が熱くなってきた。窓を滑る雪。降っている景色の涼しさ。輝き。クリスマスになると、ふと思い出す。