ここはおうち

 秋の夜。福島への帰り道。新幹線。後ろの座席が賑やかだ。
 
 若い父と母。小さな男の子の姿。指定席。あまり人がいない。だだをこねている。だっこ、だっこ…、と。

 やがて父は幼い人を抱えて、デッキのほうへ。どんなお話をするのだろうか。しばらくすると戻ってきた。再び「座りたくない」の攻撃が始まった。

 私も妻と幼い息子と三人で、このような旅を良くしていた。懐かしくて顔がほころんでしまう。ふと静かになった。気になった。そっと振り向く。

 絵本を読んでいる。おりこうさん。その間に二人は急いでお弁当を食べる。この光景も見覚えがある。まるでタイムマシーンに乗っているようだ。那須や白河の駅を過ぎた。

 また元気になった。近くの空席を見つけては座ってみる。流れる夜景と電灯。「元の席に戻ろうよ」「ここがいい」「ここはおうちではないんだよ」「ここはもうおうちだよ」。

 福島に到着。「着いたね」。わが町の子どもさんだった。ますます可愛らしくなる。

 息子は大学生となり違う町で新生活。あどけない姿は昔の彼である。歳月は早かった。新幹線の速度で過ぎていった気がする。ふと反対方向の列車に乗ってみたい時がある。