手を振りたい

 人と別れるのが苦手だ。どうしてもしつこくなってしまう。例えばさよならの握手をしてからも、何度もお辞儀をしてしまう。それに合わせて相手の方も頭を下げる。それを見てまた私も。

 駅前でこのようなことをしていると、しだいに時間に間に合わないのではないかという雰囲気になる。

 別れてからも、私は必ず相手を振り返る。また目が合う。にこにこする。手を振る。笑う。しかしさっそうと行ってしまう人がいる。あんなに談笑していたのに、少し素っ気ないといおうか、鮮やかな引き際だ。場所が都会であるほど、そのような切り上げが早い気がする。人混みに紛れていく。

 仕事の帰りの夕方。本宮駅で電車を待っていると、正月を避けて帰省してきたのだろうか、東京方面へと帰る娘の姿があった。 

母と話していたが、電車が来る時間になって、目も合わさずに、すぐに改札へと行ってしまった。ずっと親は後姿を見送っている。何というアッサリとした態度だろう。

 私は見送っている人のすぐ後ろに立って、彼女の姿を見つめた。ホームに立って、夕焼けを背に母に親しく手を振った。母も。何だかほっとして、私も手を振りたくなった。