バラモンの匂い

 鉛筆が好きである。 文字を書く手ごたえ。ボールペンよりもそれがある。詩を作る時にはあまりスラスラと進まない方が良い。

 机の上には鉛筆と削り器とがあって、自分の走り書きとにらめっこしながら、筆の先を尖らせている自分がある。上手くいっている場合は、手にも力が入る。ダメな感じだと削ることも途中で止めてしまいそうになる。

 先が丸まっていくと感覚も鈍っていく気がする。削り終えると急に鋭くなった先端が、インスピレーションを誘ってくれる予感がある。生まれ変わった心持ちでまた始めてみることにする。

 反対もある。もっと書きたいのに、芯が丸くて太すぎる。それでも太字でやり通す。やがてなくなる。仕方ないので止めて削る。

 しかし必ず次には紙の上で新しいその先を折ってしまう。なぜなら手に力がかなり入っているのだ。また削ることになる。捕らえたい詩が逃げる。何だか一人で笑ってしまう。

 西脇順三郎の詩句が浮かぶ。「扇のように軽い鉛筆だ/あのやわらかい木/けずった木屑を燃やすと/バラモンの匂いがする」。燃やしたことはないが憧れる場面。鉛筆は一本の木だ。季節が宿る。「門をとじて思うのだ/明朝はもう秋だ」。