ばいばい

 仕事納めの日。雪の舞う本宮駅。金星を見上げて深呼吸。寒い一日の、一年の暮れ。

 男の子が二人。小さい彼はすぐに「お兄ちゃん、お兄ちゃん」と甘えた声で話しかける。お揃いの茶色いコートに付いたフードをすっぽりと被って、冷たい風を我慢している。

 兄は右手に、クリスマスケーキの箱を持っている。二人でこれを買うために、電車でやってきたのだろうか。ふざけ合いながら、げらげらと笑う兄弟。

 そしてくるりと振り向く。線路を挟んだ改札口に向かって、大きく手を振る。「じいちゃん、さよなら」。

 私もホームのお客さんも一緒に振り向く。相手は改札からぬっと顔を出して「ちゃんと乗るんだよ」。

 それから小さな二つの姿のパフォーマンスが始まった。手足を広げて踊ったり、おどけたポーズを見せたり。寒さを忘れてみんなが注目(駅員さんも)。

 白い夜空にこだまする祖父と孫の声。ばいばい。バイバイ。

 雪原を進む。電車に乗ってからも私の顔はゆるみ続けた。たまには子どもに戻って、あんなふうに大きな声で手を振ってみたい。 

 星よ。一本の光の列が通り過ぎているのが見えるだろうか。次の駅へ。来る年へ。ばいばい。バイバイ。