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孤独だからこそ 手をつなぎませんか だからこそ手を にぎりませんか だからこそ 空をみあげませんか ゆっくりと 春だけが急いでいます わたしたちは まだ 靴のひもを むすんだばかり
たった一人で 考え続けています どうして私は いつもたった一人なのかを たった一人で
朝の福島は 青い空です みなさんの街は どうですか 空から たくさんの色彩が降ってきています わたしの心の色も あなたの心の色も そして 白い画用紙を 前にして どのクレヨンにしようか わたしたちよりも 小さな わたしたちは あれこれと 触っています 明日がめぐってくるから
はるかな街で 朝の通学路に 車が飛び込み 身代わりになって ランドセルを 背負った 子どもたちを守った 男性のことを想っている 数十年前に 幼い娘さんを 事故で亡くされて それから 朝の通学路に 立ち続けた方だった 守るという生き方を想う 3月11日がめぐってくる
さびしい気持ちが 幼い子どもの姿をして 僕をみあげている
さびしい気持ちが 幼い子どもの姿をして 僕を みあげている 抱っこして 抱っこして って 言っているみたい この先 電車が揺れるから あぶないよ こっちに おいで
ふと 眠気がやってきて 電車に揺られながら 目を閉じると トンネルにさしかかる でも みなさんも 必ず さしかかります おそらく今晩も 眠る前に
イヤホンから 少し 音楽がこぼれている 隣の席からも 向かいに座る 人からも それぞれの 秘密の 音楽が混ざり合う まばらな人影 早い朝の電車 春が急いでいる
季節がある日に はるかな昨日からやって来て わたしたちの明日に 言葉を忘れていった 生きることの寂しさや 悲しみや優しさの中で わたしたちは ああ 春が来ていたのだと 思い出したように気がつくのだ
春がある日に はるかな山々からやって来て わたしたちの暮らしに 枝や葉を置き忘れていった またかあ などと目くばせしながら わたしたちは 揺れる木のこずえを見あげているのです
春がある日に はるかな海からやって来て わたしたちに おだやかな光と波の音を忘れていった 耳をすませてごらん きみにささやきながら わたしたちは 手をつないで また つないで
春がある日に はるかな海からやって来て わたしたちに おだやかな光と波の音を忘れていった 耳をすませてごらん きみにささやきながら わたしたちは 手をつないで また つないで
春がある日に はるかな平原からやって来て 街に風を置き忘れていった 仕方ないなあ などと笑いながら わたしたちは それに吹かれていくのです
明日 3月11日は 東日本大震災慰霊塔のある 福島市 安洞院 慰霊祭にて 新しく書かせていただいた詩を 朗読し 奉納させていただきます