詩の礫01

災に遭いました。避難所に居ましたが、落ち着いたので、仕事をするために戻りました。みなさんにいろいろとご心配をおかけいたしました。励ましをありがとうございました。

本日で被災六日目になります。物の見方や考え方が変わりました。

行き着くところは涙しかありません。私は作品を修羅のように書きたいと思います。

放射能が降っています。静かな夜です。

ここまで私たちを痛めつける意味はあるのでしょうか。

ものみな全ての事象における意味などは、それらの事後に生ずるものなのでしょう。ならば「事後」そのものの意味とは、何か。そこに意味はあるのか。

この震災は何を私たちに教えたいのか。教えたいものなぞ無いのなら、なおさら何を信じれば良いのか。

放射能が降っています。静かな静かな夜です。

屋外から戻ったら、髪と手と顔を洗いなさいと教えられました。私たちには、それを洗う水など無いのです。

私が暮らした南相馬市に物資が届いていないそうです。南相馬市に入りたくないという理由だそうです。南相馬市を救って下さい。

中所さん、あたたかい励ましをありがとうございます! 全く油断の出来ない状態ですが、心と暮らしを立て直していけるようにしたいと思います。

あなたにとって故郷とは、どのようなものですか。私は故郷を捨てません。故郷は私の全てです。

放射線はただちに健康に異常が出る量では無いそうです。「ただちに」を裏返せば「やがては」になるのでしょうか。家族の健康が心配です。

そうかもしれませんね。物事と意味には明らかな境界がある。それは離反していると言っても良いかもしれません。

私が避暑地として気に入って、時折過ごしていた南三陸海岸に、一昨日、1000人の遺体が流れ着きました。

このことに意味を求めるとするならば、それは事実を正視しようとする、その一時の静けさに宿るものであり、それは意味ではなくむしろ無意味そのものの闇に近いのかもしれない。

今、これを書いている時に、また地鳴りがしました。揺れました。息を殺して、中腰になって、揺れを睨みつけてやりました。命のかけひきをしています。放射能の雨の中で、たった一人です。

あなたには大切な人がいますか。一瞬にして失われてしまうことがあるのだ…と少しでも考えるのなら、己の全存在を賭けて、世界に奪われてしまわない為の方法を考えるしかない。

世界は誕生と滅亡の両方を、意味とは離反した天体の精神力で支えて、やすやすと在り続けている。

私の大好きな高校の体育館が、身元不明者の死体安置所になっています。隣の高校も。

また地鳴りが鳴りました。今度は大きく揺れました。外に出ようと階下まで裸足で居りました。前の呟きの「身元不明…」あたりで、です。外に出ようたって、放射能が降っています。

気に入らなかったのかい? けっ、俺あ、どこまでもてめえをめちゃくちゃにしてやるぞ。

絶対安全神話はやはり、絶対ではありませんでした。大熊、広野、浪江、小高、原町。野、町、海。夜の6号線から見えた、発電所の明かり。

父と母に避難を申し出ましたが、両親は故郷を離れたくないと言いました。おまえたちだけで行け、と。私は両親を選びます。

家族は先に避難しました。子どもから電話がありました。父として、決断しなくてはいけないのか。

ところで腹が立つ。ものすごく、腹が立つ。

どんな理由があって命は生まれ、死にに行くのか。何の権利があって、誕生と死滅はあるのか。破壊と再生はもたらされるのか。

行方不明者は「行方不明者届け」が届けられて行方不明者になる。届けられず、行方不明者になれない行方不明者は行方不明者ではないのか。

スーパーに3時間並んだ。入れてもらって、みんなと奪い合うようにして品物を穫った。おばあちゃんが、勢いにのれずにしゃがみこんだ。糖尿病でめまいがしたと言った。のりまきと、白米と、ヨーグルトを取ってあげた。

おばあちゃんに尋ねた。「ご家族の方をお呼びしますか」。おばあちゃんは「一人暮らしなんだ」と教えてくれた。家まで送りましょうか。「家は近いんだ」

翌朝5時に、水をもらうために並んだ。すでに長蛇の列だった。1時間ぐらい経って、みぞれが降ってきた。男の子がお父さんに笑い顔で言った。「お父さんよりも僕のほうが先だったね、起きたの」。その可愛らしい顔を見て、私は思った。おばあちゃん、水、大丈夫かな。

シンサイ6ニチメ。ウマイコーヒーガ、ノミタイ。ノンデナイ。ノメルミコミハ、ナイ。

続々と避難していきます。避難所にいたから分かりますが、そちらも大変です。頑張りましょうよ。

避難所で二十代の若い青年が、画面を睨みつけて、泣き出しながら言いました。「南相馬市を見捨てないで下さい」。あなたの故郷はどんな表情をしてていますか。私たちの故郷は、あまりにも歪んだ泣き顔です。

また揺れた。とても大きな揺れ。ずっと予告されている大きな余震がいよいよなのかもしれない。階段の下まで行って、揺れながら、階段の先の扉を開けようか、どうしようか、悩んだ。放射能の雨。

ガソリンはもう底を尽きた。水がなくなるか、食料がなくなるか、心がなくなるか。アパートは、俺しかいない。

だいぶ、長い横揺れだ。賭けるか、あんたが勝つか、俺が勝つか。けっ、今回はそろそろ駄目だが、次回はてめえをめちゃくちゃにしてやっぞ。

これまでと同じように暮らせることだけが、私たちが求める幸福の真理であると思う。

タマネギを、たくさんいただいてきた。箱いっぱいに。近所のおじさんが作ったものをくれたのだ。しかし実はタマネギが苦手である。玄関にその箱を置いて、じっと見つめている。ついこの間まで、あった、僕の毎日…。

0時。ヒサイ6ニチメ。サッキノウソ。コンドハ6ニチメ。コレカラ、イツカカン。ワタシハ、ケッチャクヲツケタイ。

台所。メチャクチャになった皿を片付けていた。一つずつそれを箱に入れながら、情けなくなった。自分も、台所も、世界も。

明けない夜は無い。

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