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知ってほしいのです あなたの声に耳をそばだてていると わたしのいまが 静かな波に 洗われていくことを 川のせせらぎに 心を遊ばせているようです 一度も まだ 話したこともないのだけれど
静かな音楽のあとで わたしたちは 語り 涙を拭かなくてはならない どんなに とめどない 悲しみが眠っていて ふとしたことでそれがあふれてくるのかを
ああどうしてこんなに 静かなのだろう わたしも あなたも この世界そのもの わたしは 草原を行く雲の影 あなたは 丘の家の窓
日本人の幽霊に 日本人は脅されています 私の幽霊に 私は脅されています
私たち日本人はあの日から幽霊と暮らしています 巨大なものの影と暮らしています 誰の幽霊 誰の影 それは日本人そのものです
言葉が星を裏切るということが本当にあるのだと分かったから私たちは缶ジュースのプルタブを永遠に引っ張るということはないのだ
それはいくつもの影が集まり夜から夜へと一つずつ金色のブルドーザーを消し潰そうとする欲望の行為である
静かな音楽のあとで わたしたちは 語りださなくてはならない どんなに それぞれが 小さくて弱い人間で ひとつひとつのことに傷ついているのかを
何も出来ないわたしだけれど わたしたちが生まれてきた意味をたずねたい わたしたちが生きている証を大事にしたい だから あなたの心を支えたいのです
あなたの心の支えになりたいと いつも夢をみて 新聞記事の悲劇に 心を痛くしたり 独りぼっちの誰かに 声をかけたくなったり 野良犬に パンをあげたいと 思うだけなのだ
何も出来ないわたしだけれど あなたの心を支えてあげることはできると そんなふうに 空を見あげている 鳥と 祈っている
あなたの心の支えになりたいと ささやかに願い 何も出来ずに うろうろとしているだけのわたしは 雲を眺めたり 木を見つめたり 風の中で 深呼吸したりするだけなのだ
詩ト詩トシカク
誰もいない町があることを知っている誰もいない道があることを知っている誰もいない家があることを知っている誰も読まない本が開かれていることも窓辺で2つの靴が並んでいることも空っぽのリュックサックがあることも物干しざおが外れていることも犬が歩いていることも
部屋の空気が すっかりと冷えて 少し厚めの服を着こんで さっきから原稿と 向き合っているんだけれど 先が進まなくて もっと寒々としてきた エアコンの暖房のスイッチを 入れてしまった さて はかどるのだろうか 言葉も冷たくなってしまったようで
詩ト詩トシカク
ある一脚の椅子が わたしを孤独にしている だから わたしは座ることにした
いま わたしの書斎には 一つの椅子のほかに もう一つ椅子があります キッチンで座るために 求めたものですが いつの間にか ここにあるのが自然になっています 誰も座っていないのに 座っているみたいです 椅子が椅子に座っているみたいな 一脚です 木製です
読み止しの本は開いたままで 鉛筆を机の上に転がしておいて 書きかけの帳面を開いたままにしておいて 電気を消して 窓には秋の月と雲を浮かべておいて そのまま 部屋から後ずさると良い 波打ち際の静寂と 蟹の足がやって来る
詩ト詩トシカク
宇宙の真ん中で鉛筆を削りはじめると 決まってその芯が折れてしまうのはどういうことなのか 本当のことが知りたくてまた削りはじめる 星が流れる
世界を 蛇口から滴る たった一滴の水のしずくで 黙らせてしまうかのような夜だ おやすみなさい
静かに分度器を割る
果てしのない想像力が 風になびく馬のたてがみを 真っ黒く染めていく 想像の果てまで 一列に並んでいるのは きのこの影だ
空にも足の裏がある
果てしのない想像力が 馬の群れをほしいままに走らせて もうもうとあがる砂煙は 川の底の巨大な偏平足をひた隠している
詩ト詩ト帰ル
雨が降っているあいだもずっと果てしのない落下が続いている 丈の高い葦が密生する小川を紅葉が流れていくから 鼻の大きな小動物がちろちろと水を飲んでいる
音をたてずに わたしたちの心を洗いながら ざわめきながら 体のなかをめぐっているもの この肉体の内側を行く 真っ赤なほとばしりの音楽を 聞くことは出来ないものか
絶え間ない水の往来の底で叫びつづけている無意味な蟹が青空の優しさの中で脱皮している
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