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電車を待っている まもなく入道雲が まもなく涼しい風が まもなく孤独が まもなく列車が やってまいります
急ぎ足で 階段を登ると 足だけが 先を行ってしまう気がして はっとしてしまうことって ありませんか
これから出会う 誰か 赤い比喩 口紅を塗り 青空に微笑む わたしは いつか あなたの命を まとう鬼になる そうして あなたと生きる
わたしには 太い腕がある 見えないけれど わたしには真っ赤な 血が流れている そしてあなたの血も 流してしまいたい この胸に
朝がやって来る どうしてそんなに 青くて 深い色をしているのだろう それが知りたくて 空を見あげたり 花を見つめたりする あなたの心には いつも遠い星の横顔があります
あなたの言葉が 種子になり 芽が出て 葉が広がり やがて そっと 花を咲かせる それをわたしは 秘密を守るようにして あなたの声に 耳を澄ませて 野原に探している
黙っていると 沈黙は深くなる だから つぶやきはじめる 僕たちのおしゃべりには 終わりがない この世界から 風の音が ひとつも 止まないことと 同じように
明け方の突然の雷雨に目覚める そのまま降りしきる 私は眠りのさなかで 泣いていたのか ああ 私たちは ゆめゆめ 忘れることはない あの日 雨の彼方へと運ばれていった人々を
はるか遠くの浜辺の 津波で残った たった一本の木が 私やあなたの 庭に 街に 通りに 立っている 私もあなたも あの波にさらされて 残ったその影に 立たされている