引っ越しをすることにした。十五年の間に暮らしていた住まいを移すことになった。
とはいえ、福島の街の暮らしを変えるということではない。駅をはさんで、東から西へと移動するだけだ。
あふれかえる荷物は大変なもので、連休の前半はひたすら整理に没頭した。段ボールの箱をこれでもかと積み上げると、一生懸命になって守って来た生活の城は、あっさりと箱詰めされてしまうものなのだと分かる。
あまりにもいろんなものがあり過ぎて、無理なのではないかとあきらめる。途中で何度もため息をつき、それを言いかける。妻も子も必死に手を動かしているので、頑張る。
あの日から三日後。避難していた公民館から戻って来た夜、こんなふうに部屋の中は雑然としていたものだった。それを私たちはなんとか片づけて、余震の中を暮らしたのだ。
転居することを決めた時、家族の歴史が頭をめぐった。三〇代から四〇代の人生。幼い子を育てながらの楽しい時が、この家にたくさんあった。
人生が切り変わる瞬間はほんのひとときなのだ。寂しさ。箱。
あの日から三年。我が家に帰宅したくても、それが出来ない人々の深い悲しみを想う。箱。その上に。
(初出「福島民報」誌連載より)