2014.3.23

 春風に日々を思い出す。三年前の三月二十三日のことだ。

 水が出なくて、ずっと風呂に入れなかった。朝に蛇口から勢いよくあふれてきた。

 しばらく止まっていたから錆びが出たのだろう。いつまでも水は赤かった。ずっと出したままにしていても、それはなかなか消えなかった。

 何度も繰り返したが駄目だった。浴槽に溜めては栓を抜く…、を繰り返した。夕方になっても、やはり風呂桶の中の赤みが分かった。

 腹が立った。何に。震災の全てに。涙がこみあげてきた。三月十一日からの全ての記憶。一斉に。

 なぜ彼は行方不明になってしまったのか。どうして人は避難をしなくてはならなくなったのか。福島はどうなるのか。風呂場の壁を、何度も叩いた。

 私は一人で何をしているのだろう。はっと我に返った。思い立って、いつも出かける温泉に電話をしてみた。

 こちらもやっと水が出ました。夜の八時までなら入れますよとのこと。車にガソリンは全くなかったから、タクシーに乗せてもらい、出かけた。

(初出「福島民報」誌連載より)

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