2012.6.22

書き文字というものは、人を表わす。そんなふうに信じるから、私は字を書くことに関して、かなり緊張してしまうのである。
たとえば初めて会った方の本に署名をするとなるとドキドキせずにいられない。なかなか知人には信じてもらえないのだが、あがり症のところがあって、サインを書くテーブルの周りでみんながじいっと見ていると思うと、自分の名前すら間違いそうになる。
私の名前には「一」という文字がある。自分で分かることなのだが、調子が悪いと「一」がなんとなく波打ってしまう。汗が出る。
大学生の頃に書道を少しだけ習った。塾へ通った。小学生と一緒に並び、墨をする。難しい字をぱっと書いてしまう子どもたちの上手さに驚嘆。「大波」とか「希望」とか…、こんなふうに書いてみたいと心から思った。
入門ということで、ひたすら「一」の字から始まった。先生はこれが全ての基本だと教えてくれた。難しさを知った。たくさん書いたものの中からいくつかを選び、最後に赤丸を付けてくれた。良い「一」とは…。
私の字は今だ自慢出来るものではないが、だからこそ、心を込めるしかないと思う。「一」。

(初出「福島民報」誌連載より)