本棚の片付けをしていた。古い切手のアルバムを見つけた。
 懐かしくなって開いてみると、子どもの頃に夢中で集めていた数々が、きちんと収っている。お小遣いを貯めてデパートに買いに出かけたものや、友だちとあれこれと交換したいくつか、並んで手に入れた記念切手など、一枚一枚の思い出が頭に浮かんでくる。
 一番懐かしかったのは、消印がついている古切手だ。これは家に宛てられてきた封筒から切り取って、洗面器にお湯を入れて浮かべて、ふやかして、大切に剥がしたものだ。
 縁側で、祖父と二人でこのことをよくやった。それを乾かすと、コレクションが増えていく。ぽかぽかとした陽射しを浴びながら、祖父と孫の作業は続いたものだった。
 ある日、貴重品をもらった。祖父がしまっていた切手である。「五厘」や「四銭」などと書かれていて、ひげを生やした将校や富士山や飛行機の図柄がある。時代が一つ前だと分かった。
 それを祖父が亡くなってからもずっと大切にしていた。久しぶりに眺めながら、いくつになっても自分にとっての宝物は変わらないのだと思う。こんな小さな物にも、故郷はあるのだ。

(初出「福島民報」誌連載より)

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2012.05.11更新