2012.4.20

空も風も、花も、よそおいをしている。昨年はまるで味わう余裕がなかった。そして今もなお心に変わらないものを抱えているままだけれど、めぐりくるものに大きく包まれてゆく。
仕事からの帰り道、ふと目をやると、大きな建物の軒下にいくつか小石が並んでいた。この春に引っ越してきたお子さんが、遊んだのだろう。それを眺めて、くすりと一人でほほえんだ。
しばらく経ってからある編集の方と食事をしながら、春を感じる瞬間は人それぞれに違うという話に夢中になった。ある人は桜の開花であるだろうし、ある人は山の眺めだったり、愛でている庭木の姿だったりするだろう。そのとらえ方の違いを集めてみたらいいんじゃないか。それをみんなに語ってもらったり、文章にしてもらったりして、一冊にまとめたら面白いんじゃないか。表紙はこうで、写真はこんなふうに織り交ぜて…など、ああでもない、こうでもないと話は弾み、酒杯も重なり、楽しい花見の会となった。実現するかしないかよりも、そんな話題が楽しい。
私は頭の中で、近所の小石の風景のことを、ずっと考えていた。そしてまた一人でふっと笑みがこぼれてしまった。昨日の朝に眺めてみたら、小石がもっと並んでいたのだ。とても楽しみだ。

(初出「福島民報」誌連載より)