2012.3.22

あまり遠くはない所に、よく出かける温泉がある。震災があってから、なかなか足を運ぶ気持ちになれなかったのだが、今は元気を出して時々に行くことにしている。
顔なじみの従業員さんに「何か希望が持てるような言葉を」…とまっさらな色紙をいただいた。
ちょうど昨年のお彼岸過ぎだ。水が出なくてお風呂に入れない時に電話をしてみた。「少しの時間だけしか営業していませんが、今ならやってますよ」。ガソリンが無い。タクシーで移動。実に十日振りだった。感謝した。これが泉の力だ。
帰りの車内では運転手さんと夢中でこれまでの話しをした。「お客さん、体の垢ぐらいでそんなにへこたれてちゃダメですよ」などと励まされた。そうだよな。車の窓には早春の夕焼けを乗せた、吾妻山が影を映じていた。雄大で見事だった。
その日の記憶があったから、筆字は相変わらず苦手なのだが、自分から記してみようと思った。言葉はすぐに浮かんだ。
「新しい一歩のために/次の一歩を生きる」。拙いものですが…、お湯からあがって、ふとそれを見つけて下さったあなたと、同じ一歩を踏み出したいと願っています。

(初出「福島民報」誌連載より)